書かずにいられない遺言書~内縁の妻(夫)編~

家族の形も色々とあります。
内縁と聞くと、ちょっと眉をひそめたくなりますが、配偶者を亡くした者同士で支え合いながら長年連れ添うといった関係もあるかもしれません。
婚姻届けを出していないだけで、夫婦のように仲睦まじくされている方たちもいらっしゃるでしょう。
しかし内縁関係または事実婚では、法律上「妻」「夫」とは認められません。
もちろん「配偶者」でもないので、税金や保険、年金などの優遇制度を受けることもできません。
ですが、内縁関係は「婚姻に準ずる関係」として、いくつか保護される場合もあるのです。
今回は、そんなデリケートな関係で相続が発生した場合をシュミレーションしてみました。
内縁の妻は相続人になれない?
妻を早くに亡くし、一人娘も嫁いでいって一人暮らしをしていたAさんと、夫と離婚したB子さんは一緒に暮らすようになりました。
独り身が長く寂しさを感じてしたAさんは、B子さんをとても大切にし、二人は夫婦のように生活しています。
数年が過ぎましたが今更結婚する歳でもなく、一人娘もいい顔をしないので、このまま二人で、老後を支え合いながら暮らしていこうと話し合っていました。
ところが突然Aさんが亡くなってしまいます。
Aさんには多くの財産はありませんでしたが、二人で住んでいた一軒家の名義はAさんです。
父親の死で駆け付けたAさんの娘さんがB子さんにこう言いました。
「この家は娘であるわたしが相続します。ですが、わたしも嫁ぎ先に家があるのでこの家があっても仕方がありません。売却を考えているので出ていってください」
娘さんの言葉は容赦がありません。
B子さんは、二人で平和に暮らしていた思い出の家を追い出されてしまうのです。
内縁の妻へ相続を遺すには?
Aさんは娘さんの顔色を気にして婚姻関係に踏みこめませんでしたが、内縁のままのB子さんを大切に思うのなら「遺言書」を遺しておくべきでした。
「全ての財産をB子へ遺贈する」という公正証書があれば、B子さんはいきなり路頭に迷うことはなかったのです。
ただし娘さんには「遺留分」を請求する権利があります。
遺留分を考慮した財産配分も考えておかなければいけません。
特別縁故者という方法
B子さんが、Aさんを献身的に世話をしていたという実績があれば、B子さんは「特別縁故者」として相続が認められるかもしれません。
例えばAさんの娘さんが、家があっても仕方がないので相続放棄をするといった場合です。
他に相続人が誰もいない場合は、B子さんは次の相続候補者として浮上してきます。
家庭裁判所に特別縁故者を申し立てて認められると、B子さんはAさんの財産を相続することができます。
ただし、配偶者としての減税対象にはならないので、相続税は2割増しになります。
内縁関係と愛人の違い
内縁関係と愛人は、似ているようで全く違うので間違えないでくださいね。
愛人は、相手もしくは双方が既婚者あることをわかっていて交際をする不倫関係といいます。
当然、上記のような保護の対象にはなりません。
ただ、戸籍上の配偶者との夫婦関係が事実上破綻している場合は、内縁関係を認められる場合もあります。
時代の変化によって、柔軟な考え方もできるようになってきているようです。
ただし愛人は、当事者の死後であっても慰謝料を請求される場合があるので、相続に首を突っ込まない方がいいでしょうね。
「書かずにいられない遺言書~内縁の妻(夫)編~」のまとめ
夫婦のあり方も多様になってきました。
それぞれの考え方が尊重される時代です。
内縁関係を選択することも、それほど奇異ではありません。
ですが遺言書がない限り、内縁の妻(夫)には相続権はないのです。
支え合った思い出もなにもかもを、突然失うことになりかねません。
お互いを守る思いやりとして、遺言書という知識を知っていてもらいたいと思います。
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