自筆証書遺言の書き方!無効を防いで確実にするには?

自筆証書遺言書とは、自分自身で書く遺言書のことです。
民法968条で「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」と定めた遺言書を作る方法の一つです。
自筆証書遺言は、いつでも気軽に書けて費用もかからないために、利用する人は多いですが、作成方法を間違えると、遺言書として認められない場合があります。
遺言書には他に、公証役場で作成する公正証書遺言や、内容を秘密にして公証役場で証明だけしてもらう秘密証書遺言があります。
今回は自筆証書遺言についてみていきましょう。
作成方法を間違えなければ、とても作りやすく利用しやすい自筆証書遺言書なので、是非ポイントを押さえておいてください。
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自筆証書遺言に必要な要件
遺言書は、相続争いを避けたり、家族に安心してもらうためにとても有効な手立てです。
ですが、遺言者が死亡した後に効力が発生するために、自筆証書遺言には条件や要件が厳格に定められています。
一歩間違えると全く無効になってしまうので、必要な要件をしっかり知っておきましょう。
自筆証書遺言に必要な要件は以下の5つです。
全文を自分で書く
遺言内容から封書の表書き、裏書きまで、全て自分で書きます。
これは偽造を防ぐためと、後で筆跡鑑定をすることがあるかもしれないためです。
ほんの一部分でも、誰かの代筆やパソコンで打った文字があってもいけません。
(※最近の流れで、遺産リストなどはパソコンでもいいという制度改正が期待されています)
用紙や筆記具についての条件はありません。
極端な例ですと、チラシの裏に鉛筆で書いても、要件が満たされていれば有効です。
ですが、偽造を防ぐためにも、丈夫な紙に文字が消えない筆記具で書く方がいいでしょう。
縦書き、横書きは自由です。
日付(年月日)を必ず書く
遺言書を書いた年月日を客観的にわかるように書きます。
日付が必ず必要です。
例えば「2018年5月吉日」では無効となります。
これは、遺言書を書き替えたりして何通かあった場合に、一番新しい日付のものを有効とするためです。
また、遺言者が遺言書を作成した時に、遺言書を作成する意思・能力があったかどうかの判断もされます。
元号や西暦、漢数字や算用数字はそれぞれ自由です。
自書で署名する
全文自筆と重なりますが、遺言書の作成者を明確にするために必ず必要な署名です。
名前はペンネームや通称名でも可能ですが、誰が書いたのかをはっきりさせるためにも、戸籍通りのフルネームがいいでしょう。
押印をする
署名をしても押印を忘れるとことがたまにあるようですので注意が必要です。
印は、認印でもシャチハタでもいいのですが、実印であれば間違いがありません。
遺言書を入れる封筒にも封印をするといいですね。
封印がなくても問題はないのですが、偽造や改変を疑われるのを避けるためにもおすすめします。
訂正箇所には署名と訂正印が必要
遺言内容はいつでも訂正することができます。
ただし、遺言内容を訂正したり書き加えたり、また一部を削除するような場合は、きちんとした訂正方法が必要になります。
まず訂正した個所に二重線を引き、訂正印をします。
そして別の場所(欄外など)に、訂正した内容や書き直した文字、削除した部分などを記載して署名します。
この方式で訂正されてない場合は、訂正が無効となりますが、遺言書は有効です。
2カ所以上訂正がある場合は、書き直した方がいいかもしれませんね。
その他の注意事項
自筆証書遺言を確実に実行するために、気をつけたいポイントがいくつかあります。
保管に気を付ける
書いた後は紛失をしないように保管しましょう。
隠してはいけません。
遺言書を確実に見つけてもらえるように、わかりやすい場所に保管し、保管場所を配偶者など信頼できる人に伝えておきましょう。
遺言執行者について
遺言執行者とは、遺言書の内容を確実に実現するための手続きなどをする人です。
財産の相続をスムーズにするために、信頼できる人にお願いします。
ですが、特に問題がないようであれば、無理に執行者を選任する必要はありません。
財産や相続人が多く、相続人による持ち逃げや、勝手に処分されることを避けたい場合は、執行者を選任し、粛々と相続手続きをしてもらうのも一つの方法です。
誰を執行者として選任したかを明確に書き加えておくといいでしょう。
夫婦共同の遺言書は作れない
2人以上の者が同一の証書で遺言書を作成することはできません。
夫婦などで二人で共同した遺言を作成したい場合は、別々の用紙にそれぞれ単独で書きます。
その時に、内容が重複したり、意見が異なっていると、かえってややこしくなりますので、十分注意して、よく話し合いながら作成しましょう。
いずれにしろ、2人が同じ書面で遺言書を書くと、どうしても矛盾が生じたり、不安定な内容になったりします。
それでも夫婦で遺言書を遺したいときは、相続の専門家によるサポートがあったほうが確実です。
相続財産を整理する
自分が亡くなった後、財産振り分けについての希望を遺言書にするわけですが、遺言書にない財産が後でみつかったりすると、それはそれで大変です。
争いをさけるための遺言書が争いの元にならないように、自分の財産を正確に把握し、整理してから遺言書を作成してください。
遺言書を見た人が、どの財産のことが書いてあるかが、はっきりわかるようにすることも大切です。
土地なら「登記簿」を、預金であれば「支店名・口座番号」を記載するなど、わかりやすくしておきましょう。
自筆証書遺言の検認について
遺言者が亡くなったあと、遺言書を見つけた相続人は、故人の最後の住所地にある家庭裁判所に遺言書を提出し、必ず検認の手続きをします。
これは法律で決められています。
検認とは、遺言書の存在とその内容を相続人に知らせ、遺言書の内容を明確にするとともに、偽造や改変を防止するために行います。
ここでは、遺言書が有効か無効かは判断しません。
遺言書が有効か無効かは、その遺言書に対して異議がある相続人が裁判を起こした時に、裁判所が判断をします。
封印のあるものは、相続人立会いのもとで開封しますが、万一開封してしまっても遺言書が無効になるわけではありません。
そのまま提出して、検認手続きをしてください。
検認には、遺言者の出生時から死亡時までのすべての戸籍と、相続人全員の戸籍謄本など、多くの提出書類が必要になります。
自筆証書遺言の面倒なところですね。
「自筆証書遺言の書き方!無効を防いで確実にするには?」のまとめ
自筆証書遺言は、費用がかからない、作成が手軽、財産を他人に知られない、などのメリットがあります。
検認作業は大変ですが、専門家のサポートや、自筆証書遺言の作成キットなどを利用することにより、無効になるリスクも少なくなります。
写真は、わたしが参考のために購入した、市販の遺言書キットです。
家族が困らないように、または無用な争いが起きないための遺言書です。
せっかくの気持ちが無駄にならないように、法律で定められた要件を確実にしながら作成しましょう。