おひとりさまの死後の手続きはどうなる?誰がする?

死後の手続きの大変さは、家族のいないおひとりさまも同じです。
むしろもっとややこしい手続き関係が増加します。
住んでいた家や、アパート・マンションの処理に加え、電気・ガス・水道といったものを全て止めなければいけないからです。
どれだけ生前に準備をしても、死後でなければできない手続きもあります。
これらはいったい、誰が処理するのでしょう?
今回は、おひとりさまの死後の手続きについてみていきます。
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マンションなどの不動産はどうなる?
おひとりさまが所有するマンションは増加しています。
個人の財産であるその部屋は、大家さんや管理する人が勝手に処分することはできません。
さらに、電気・ガス・水道といったライフラインの他、賃貸であれば家賃の未払いが発生してしまいます。
これらは、亡くなった人の借金になりますが、おひとりさまには相続する人(清算してくれる人)がいないのです。
おひとりさまの不動産は国庫へ
相続人のいないおひとりさまの住んでいたマンションなどの不動産は、複雑な手続きを経て国庫へ入ります。
○おひとりさま死亡。
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○検察官・債権者らが「相続財産管理人」の選任を、家庭裁判所に申し立てる。
(申し立て人は、マンションの管理会社や個人、金融機関など様々です)
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○相続財産管理人の選任。
(おもに司法書士などの専門職が選ばれることが多いようです)
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○相続財産管理人は、遺言書の有無を確認したり、相続人・債権者がいれば申し出るように公告。
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○相続人がないことを確定する。
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○借金整理のために、不動産を競売にかける。
(預貯金で借金が整理できる場合は、不動産の競売はされません)
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○特別縁故者(事実婚の相手や、故人と縁の深かった人)の申し立て期間。
(特別縁故者への相続分与は家庭裁判所が判断します)
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○なお不動産が残るようであれば国庫へ。
このような複雑な手続きを経て国庫へ入る不動産は、近年増え続けているそうです。
国庫へ収納されたくない場合
中には、自分が築きあげた財産を、国へ取られたくないという人もいるでしょう。
そのような場合は「遺言書」が有効です。
例えば「自分の死後、不動産を売却したお金は〇〇動物愛護ボランティアに寄付をする」など、遺言として明記する方法です。
自筆遺言は気軽に書けますが、おひとりさまの場合は、この遺言書を誰が見つけて、誰が執行してくれるのかという問題があります。
遺言書はできるだけ、公正証書として残しておいた方が安心です。
また、信託会社との契約で「遺言代用信託」という方法もあります。
信託会社が遺言を執行してくれるので、色々な手間が省けます。
死後の事務手続きは誰がする?
おひとりさまが、自宅で誰にも気づかれずに死んでしまった場合、どのような手続きを経て供養されるのでしょうか?
遺族がいても煩雑な事務手続きは、いったい誰がするのでしょう?
おひとりさまの遺体はどうなる?
おひとりさまが亡くなって、遺体の引き取り手がいない場合、自治体がその事務手続きを引き受けます。
○近所の人が遺体を発見し、警察へ通報する。
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○警察が検視をし、身元を確定する。
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○警察署の署長が、市区町村長に連絡をする。
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○連絡を受けた市町村は、戸籍を取り寄せるなどして親族を探す。
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○親族が見つからない、あるいは親族が受け取りを拒否。
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○市区町村長が死亡届けを提出。
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○市区町村で契約している葬儀社が、遺体を警察から引きとる。
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○葬儀社が火葬し、無縁仏として供養する。
(供養後に親族が現れる場合があるので、すぐに納骨せず、数年間保管されます)
自治体と契約する葬儀社は、毎年入れ替わるので、その都度、葬儀費用が変わります。
相場としては10~20万円くらいです。
葬儀費用の負担は誰が?
葬儀費用は、原則本人負担です。
警察が押収した所持金があれば、債権者がいても優先的に徴収されます。
現金がなく、預貯金や不動産のみの場合は、自治体が家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立て、財産を処分してもらった後に、葬儀費用を徴収します。
財産が全くなかったら?
財産もなく、現金でも足りなかった場合は、公費のお世話になります。
東京都内で、公費で供養されたおひとりさまは、生活保護費受給者を除いても、年間200人を超えるそうです。
中には、どうしても身元がわからないホームレスや行き倒れで亡くなった「氏名不詳」の方も。
無縁仏で供養された「氏名不詳」の遺骨も、他のおひとりさまの遺骨同様、数年間保管されます。
突然行方不明になった兄を、弟がずっと探していたという事例もあったそうです。
任意後見制度を利用しよう
おひとりさまが、死後事務の手続きをしたり、認知症になった時の財産管理を託す準備として「成年後見制度」があります。
成年後見制度には、家庭裁判所が後見人を選ぶ「法定後見」と、元気な時に自分の意思で後見人を選ぶ「任意後見」の2種類があります。
最近の終活ブームで、おひとりさまに注目されているのは「任意後見」です。
任意後見人は、お友達にお願いすることもできますし、行政書士・司法書士・弁護士、またはNPO法人などと契約することも多いです。
契約は、公証人の元で、公正証書によって行われます。
見守り契約
任意後見制度を利用するとして、例えば自分が認知症になった時に、誰が後見人に連絡してくれるのかという不安がありますね。
それを補完するのが「見守り契約」です。
これは、契約した人が定期的に訪問したり、電話などで健康状態などを確認してくれるというもの。
何か異常があれば、家裁に任意後見開始の連絡もしてくれます。
元気なうちは、この「見守り契約」だけでも大丈夫でしょう。
財産管理契約
足腰が不自由になったりして、自分の財産管理が難しくなった時に、預貯金の引き出しや、税金・公共料金などの支払いを代わりにしてくれるのが「財産管理契約」です。
預貯金の引き出しは、原則本人でなければできません。
この契約をしておくと、色々と便利だと思います。
「財産管理契約」の中に「見守り契約」が含まれているので、別途契約する必要はありません。
死後事務委任契約
上記のように、面倒な死後事務を代行してくれる契約です。
死亡届けの提出、葬儀の手配、遺品の整理、色々な支払いなどの他、遺言書の執行も一緒に契約しておくといいでしょう。
これらをスムーズに行えるのは、任意後見を扱っている行政書士やNPO法人です。
おひとりさまの終活の面倒をみてくれるこれらの契約は、家族のようなものかもしれません。
便利な制度ですので、もしもの時が心配なおひとりさまには、とてもおすすめな契約です。
「おひとりさまの死後の手続きはどうなる?誰がする?」のまとめ
高齢のおひとりさまは年々増加しています。
元気なうちはいいけれど、もしもの時を考えると不安になるという人も多いでしょう。
尊厳ある「その時」を迎えるためには、やはり元気なうちからの準備がとても大切になってきます。
寂しい孤独死を避けるためににも、是非社会との接点を持ち、各種制度を利用してください。
色んな制度を知り、学ぶことから「終活」は始まります。
それはおひとりさまに限ったことではないのです。