書かずにはいられない遺言書~子供がいない夫婦編~

人が死ぬと必ず相続が発生します。
その家の長男が全てを引き継ぐといった時代もありましたが、今はそうではありません。
法定相続人が、厳然として決められています。
そして相続争いというものは、資産家よりも、資産が少ない一般家庭で起こることが多いのです。
このトラブルを回避する最適な方法に「遺言書」があるのですが、残念ながら遺言書の普及は遅れています。
大切な家族が骨肉の争いに巻き込まれないように、遺言書の必要性を考えてみました。
特に遺言書をおすすめしたい「子供がいない夫婦」の場合でシュミレーションしてみましょう。
子供がいない夫婦の場合に起こること
例えば、子供がいない夫婦の夫が亡くなったとします。
夫の財産は預貯金が少しと、今住んでいる土地と家です。
これらは誰が相続するのでしょう?
一人遺された妻が相続すると思いますか?
そうはいかないのが相続のやっかいなところです。
法定相続人として決められているのは、まずは夫の両親(この場合は舅と姑)です。
両親が他界されていたらどうでしょう。
今度こそ妻が全財産を相続……というわけにもいきません。
夫の兄弟姉妹が相続に加わることになります。
では夫の兄弟姉妹が他界していたら?
次は、甥や姪が法定相続人になります。
妻は夫亡きあと、舅、姑、またはあまり交流のない夫の兄弟姉妹、もしくは会ったこともない甥姪といった人達と、財産分与のための協議をしなければいけなくなります。
その人数は、時に十数人になることもあります。
もし、夫の両親や兄弟姉妹がとてもいい人達で、「夫の財産は一緒に築いてきた奥さんのものだよ」と言ってくれたら、なにも問題はありません。
が、もらえるものはもらっておこうと考える人は、きっと多いでしょうね。
妻は家と土地を失う危機に!
さあ大変です。
舅姑、または夫の兄弟姉妹、甥や姪が相続に加わってきました。
全財産のうち、何割かを彼らに渡さなければいけません。
現金で用意できればいいのですが、それでは到底足りそうではありません。
家を売ってその金額を捻出しなければいけなくなりました。
夫と暮らしていたマイホームを、妻は自分とは血のつながりもない人達のために失うのです。
妻にとって、こんな理不尽なことはないでしょう。
しかも、マイホームを奪う彼らと遺産分割のための話合いもしなければいけないのです。
しかし、夫の親族にとっては当然の権利として、いただけるものはいただきたい考えるのも仕方のないこと。
兄弟姉妹の配偶者が、後ろで口出しをすることも考えられます。
妻は、夫だけでなく、家まで失うことに……。
相続の面倒な手続きが続く
夫の兄弟姉妹、甥や姪といった人達と遺産分割の話合いが始まりました。
甥姪たちは各自相続する割合は少ないかもしれません。
でも、遺産分割をするには全員の合意と署名、実印の捺印が必要です。
一人でも欠けていたり、納得できないと言いだしたりすると、相続はそこで滞ってしまいます。
妻は夫の通帳から生活費を引き出すことさえできないのです。
行方不明の兄弟がいるかもしれません。
遠くにいる甥や姪がいるかもしれません。
彼らから実印をもらうのも一苦労です。
もしかしたら両親のどちらかが認知症で判断能力がない場合もあります。
その時は家庭裁判所で後見人を選任してもらわなければいけなくなります。
妻は、夫を亡くしたのみならず、相続でも疲弊してしまうことでしょう。
そこで遺言書が登場
このような場合、夫が妻に全財産を相続させるという遺言書があれば、ここまで大変なことにならずに済みました。
遺言書は相続手続きの相続財産分配決定の順位で一番優先されるからです。
年齢的に高齢な両親が遺留分を請求することは少ないでしょう。
夫の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分とは、例えば夫が「愛人に全てを相続させる」なんてとんでもない遺言書を作っていた時に、妻や子供がそれを許さないと遺留分を請求することができる制度です。
遺言書の大切さがわかっていただけましたか?
「書かずにはいられない遺言書~子供がいない夫婦編~」のまとめ
子供のいない夫婦の相続は、なんとな~く配偶者が全てを相続するように思われがちです。
そうは問屋がおろさないということを、どうか理解しておいてください。
たとえ詳しいことがわからなくても、遺言書がなかったら大変なことになるぞ!と、覚えておいてほしいのです。
子供のいない夫婦は、お互いを守るためにも、是非遺言書を!
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